絵空事の切れ端

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おおかみこどもの雨と雪を見て

 今日2回目を見に行って、色々思うところがあったので軽く感想書きたいなと思いました。
 当然ながらネタバレを含みますので、まだ見てないよって人はスルー推奨かもしれません。といってもそんな大したことを書くわけじゃないし、本当にただ個人的に感じたことを書き連ねていくだけです。


 私がこの作品を見てまず感じたことは、母親の偉大さです。
 物語の主人公であり、雨と雪のお母さんである花。彼女が内包する心の強さに深く感心してしまいました。
 雨が生まれて間もなく愛する夫を亡くし、二十代前半にして限られた蓄えで誰にも頼らず(と言うより頼れない)に二人の幼い子どもを育てる――しかもその子どもたちは半人半狼。どういった環境でどのような教育を施していいのかもわからないまま、手探り状態で育児に励む花の心情を考えるとなんとも複雑な気持ちになります。人間として会話や二足歩行もする一方で、獣の習性もきちんと発揮する二人には手を焼かずにはいられないでしょう。引越し後もほぼ廃屋状態だった家を自分の手だけで修繕&清掃、育児を並行しての耕作――と1回目を見たときは過労と心労でいつぶっ倒れるのかと心配で仕方ありませんでした。
 それでも花は倒れなかったし、絶対に泣き言も言わなかったし、いつだって笑顔で子どもたちの側にいました。
 その強さの根源はやっぱり雨と雪なのかなあと思います。二人を守れるのは自分しかいないという義務感もあると思いますが、それよりも純粋に『二人を愛してやまない』という理由のほうが自分的にはしっくりきますね。劇中でも花は二人に甘い印象が強かったし、きつく叱ったり考えを否定する場面も思い当たらないです。その育て方が功を奏したのかは私には判断できないですが。
 いつか自分に子どもができたら、『子どものために全力で生きる』花の考えがわかるでしょうか。わかるといいな。


 そして人間と狼の間に生まれた二人に子ども、雨と雪について。
 感情豊かで勇猛果敢な姉・雪、泣き虫で引っ込み思案の弟・雨。この二人が年を重ねるにつれて迎える変化がなかなか凝っているなと思いました。
 野生動物を追い回して森を駆け回っていた雪は、同級生たちから恥をかかないように狼になることを避けて『おしとやか』を目指すようになり、弱虫泣き虫だった雨は森の主であるキツネを先生と慕い、学校をサボって大自然の中に身を躍らせるようになります。半人半狼の二人の子どもは、こうして自分が「人間」として生きるか、「狼」として生きるかの選択を無意識に選んでいったように思えました。二人の意見が対立してケンカに発展するシーンは、互いがその道を歩むことになる決定的なターニングポイントになったのではないのかなーなんて。
 でも私は本編を二回見ても、雨が狼として生きることを選択するのに最後まで納得できませんでした。
 もちろん雨がそうなっていく描写は多々あるのですけれど、それにしても愛する母を置いてまで先生の後を継ぐことは大事なことなのかと思いました。自然界の調和を守る大事な役割なのかもしれないけどさ、幼い子どもが背負うには少しばかり早いんじゃないかなと。ずっと孤独だし。でも狼としては一人前なんですよねえ。
 その一方で「早く大人になりたい」と言っていた雪も印象的でした。
 どのような意味合いでそんなことを言ったのかは色々推測できるのですが、私は自立なのだと思いました。自分のことは自分で責任を持てるようになりたいとか、自分の中の「狼」の部分と向き合えるようになりたいとかたぶんそんな感じです。転校生の草平君を傷つけて以来、自分の正体を明かすまでずっとそのことを気負っていましたからね。やはりそういったやさしさや思いやりが根幹になっていると信じたいです。


 花としてはやっぱり二人には大人になるまで人間として自分の側で生きていてほしかったと思うのですが、それでも雨が狼としての道を歩むことを否定せずに「しっかり生きて!」と力強く送り出したんですよね。本当は行ってほしくなかったと思いますけど、これも母親として子の生き方を尊重するおおらかさが表れているよなあ。
 母は強し。うん、これに尽きる。
 というわけでこの話はここまでにしたいと思います。