絵空事の切れ端

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絶対に触れられない、恋のおわり(明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。3巻感想)

 基本的にとってもコミカルで文体もめっちゃくちゃ軽いんだけど、なんか設定といいシチュエーションといい、ふたりともいいお互いを思いあってていいやつでさあ、久々にドストレートに好みに突き刺さった作品だったなーって思いました。あんまり引き伸ばす話でもないので、これくらいでちょうど終わってよかったと思うよ。
 そんな二心同体ラブコメディ「明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。」最終巻の感想です。


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 なんというか、1巻も2巻も全力で「しょうもなっ!!」って言いたいオチだったから(それがこの作品の味でもあるんだけど)、この物語の終わりも何の脈絡もなく光ちゃんふっか〜つ!とかなってもおかしくないと思っていたのに、その認識をいい意味で裏切られたかな。思い込みによるギャップ性が大きかったかも。


 生き残るのはひとりだけ。奇蹟は二度起こらない。
 けれど、ふたりが望んだ『いつか』の可能性が窺えるような終わり方がとてもよかった。安易に光を生き返らせることはせず、かといって深い傷が残るわけでもなく、素晴らしいほどの余韻が残るラストで、ちょっとうるっときたよね。秋月が自分を犠牲にすることを見越して風城に止めるように頼んだり、大好きな人を守りたいという願いがこもった最後の手紙だったり、あの破天荒ガール・光のやることがいちいち涙腺を刺激するんだよね。というかね、秋月も光もお互いを失いたくない思いがすごい伝わってきて「ああもうかわいいな青春だなチクショウ!」ってなるんだよね。秋月が光にもらったものも、光が秋月にもらったものも、いつの間にかこんなにかけがえのないものになっていたんだね。


 この物語のなにがすごいかと言うと、ふたりが『時間を絶対に共有できない』こと。魂が日替わりの二心同体生活で、コミュニケーションの手段は一冊の交換日記だけ。このふたりさあ、作中ずっと会話することも叶わないんだよ? それでこーんなに良質なラブコメを読むことができたのが嬉しい。


 顔を合わせる。
 並んで歩く。
 声を聞く。
 触れる。


 そんなラブコメの当たり前を封じられて、ここまで想い合うようになったふたりの関係は本当に好き。
 かすみちゃんとか美紗貴ちゃんとか木下くんとかその他のフラグの扱いがちょっとぞんざいだったものの、それをしょっぴいても満足できる終わりだった。本当にありがとうございました。