2014年ラノベまとめ
2014年も残すところあと一週間。いかがお過ごしですか、絵空です。
毎年言ってる気もしますが今年もあっという間だった……。原案を担当した漫画があのきららMAXに掲載されたり、アイカツ!というアニメにドハマりしてしまったりといろんなことがありましたが、概ね楽しい一年だったんじゃないかな。
という前置きをはさみつつ、例年通りの2014年のラノベ10選の記事でございます。「とりあえず今年はこれを読んどけば間違いないぞ!」ってくらいオススメのタイトルを選びました。それでは続きからどうぞ。
エスケヱプ・スピヰド 七 (電撃文庫) 九岡 望 吟 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-11-08 by G-Tools |
個人的に2014年で一番の傑作だと思います。とはいえ今年のこのラノの結果を見る限りでは、割と同じ感想を持つ人がいるんじゃないかなとも思ってるんですが……どうなんでしょうね。6巻の柊のアレとかホントによかったよな!?
とにかく敵も味方もみんなカッコよくてですね、熱いんですよ。役割のないキャラがいないし、端役ですら見せ場があってどんなキャラが好きでも報われるんじゃないかな。男率の高い作品だけど女の子も強かなんだよなあ。戦いの中で自分の想いを行動に移したり、まっすぐ言葉にできる強さときたら。ラストの九曜が叶葉を迎えに来るところは1巻を考えると泣けてくる。吟さんのイラストも併せてよかった。
吸血鬼になったキミは永遠の愛をはじめる(1) (ファミ通文庫) 野村美月 竹岡美穂 KADOKAWA/エンターブレイン 2014-05-30 by G-Tools |
「野村美月作品のメインヒロインが巨乳だぞ!!?!?」という驚きが真っ先にありましたが、中身も非常におもしろかったです。事故で死ぬ寸前だったが吸血鬼になることで事なきを得た主人公の詩也が、色々なことに引け目を感じた末に転校した先で演劇部に入ることになるのですが、死ねない体となった彼の『終わりを求める物語』と、必ず幕がある『演劇』を重ねたのがこれ以上なく噛み合っていてよかったです。純粋に物語の構成がうまいってのもあるけど、野村先生の心理描写も神がかってるんですよね。
それと詩也と演劇部でコンビを組むことになる綾音さんがめっっっっっっっっちゃくちゃかわいい。さすが作中でも聖女と言われることはある。「早く付き合って!?」って感じもするけど、この二人がくっついたら幸せにならないんじゃとも思うのでモヤモヤ。続きも楽しみです。
とある飛空士への誓約 6 (ガガガ文庫) 犬村 小六 森沢 晴行 小学館 2014-08-19 by G-Tools |
いやー、もうこの清顕対イリアの空戦という手に汗握る怒涛の展開は予想できませんでした。まさしく圧巻です。空で心を通わせることができるのに、戦いを避けられない歯がゆさ。手を抜けば兵の誇りを穢すことになり、さりとて本気で挑むものならば愛する者の命を手にかけるかもしれない緊張感と焦燥感。そんな様々な気持ちがありありと伝わってくるのが切ない。なのに両者ともカッコよくて熱い。離れ離れになった仲間たちはどうなってしまうのか、第3部が楽しみです。
青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない (電撃文庫) 鴨志田 一 溝口 ケージ KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-08-09 by G-Tools |
周りから姿を認識されなかったり、被害妄想が現実に外傷として表れたり、思春期の少年少女の心に根ざす『思春期症候群』に見舞われたヒロインたちを助ける青春モノ。リアルであれネットであれコミュニティにおける『空気』に交わらない個性を外敵として見なす現代社会。そんな数の暴力ともいえる『空気』を押し退けて、恥ずかしげもなくヒロインを助けだしていく主人公の咲太がとってもカッコいい。麻衣もかわいいけど、個人的には2巻でクローズアップされる朋絵が良かった。報われない恋だったんですけど、これがもう切なくてさあ! ループに陥った原因が前半と後半で違うのがまたさあ! こんなん好きになるに決まってるだろ!? あと鴨志田先生の作品はキャラクターの掛け合いが好きです。少し捻くれているけどテンポがよくて、言葉の端から愛を感じる。
ライフアライヴ! キミと始める学園総選挙 (MF文庫J) あさの ハジメ ゆーげん KADOKAWA/メディアファクトリー 2014-08-22 by G-Tools |
これは『クズ先輩』こと主人公・葛原北斗と『ジミ子』こと凛多愛梨の底辺二人が偽物の恋人関係となり、愛梨が姉の千夏から生徒会長の座を奪い取るのに協力する――というあさの先生の作風らしいすごく青春しててかつ熱いところも見せてくれる王道ラブコメなのですが、1巻ラストのどんでん返しがとてつもない爆弾でした。絶対的なラスボスとは本当にこういうキャラのことを言うんだろうと恐怖さえしました。読んだ時「怖ッ!?」ってふつうにビビりました……。というか『離れ離れになった双子の妹』と『新しく家族になった義理の妹』と『双子の実妹にできた義理の妹』って範囲狭すぎのに人間関係フクザツすぎぃ!
フレイム王国興亡記 1 (オーバーラップ文庫) 疎陀 陽 ゆーげん オーバーラップ 2014-04-24 by G-Tools |
現代日本の普通の銀行員・コータが、異世界に誤って召喚されてしまうという「なろう」出身の物語です。姫殿下の好奇心で勝手に召喚された上に帰る方法がないと言われても「さして怒る事でもありません」となる冷静過ぎるコータがまずおもしろい。そんな彼の『改革』によって特産品もない貧乏な領地を貿易都市へと発展させていく、というお話が新鮮でした。剣と魔法はありませんが、コータが現代日本で培ってきた経営と金融の知識を発展途上な異世界で遺憾なく発揮しているのである意味無双かもしれませんね。ていうかどう考えても『普通』の域を超える能力なんですが……。ヒロインたちも添えるだけ状態にならず、時折コータとぶつかりながらも自分の想いや信念を確固とするものにしていくのがよかった。
GランDKとダーティ・フェスタ (ガガガ文庫) 秀章 小学館 2014-09-18 by G-Tools |
こんなにスカッとする青春モノ本当に久しぶりに読んだ気がする。親の言いつけでエリートから外れることを極端に恐れた芽衣の心が、底辺男子校のバカ5人との共闘でゆっくりほぐれていく展開がストレートに心に染みてよかった。バカ5人っていうのがこの表紙の5人組のことなんだけど、どいつもこいつもいい男なんだよこれが! 最初は一茶たちのことを敵視さえしてた芽衣も、朱に交わればなんとやらとばかりに雰囲気が柔らかくなっていくのがかわいいんだよね。終盤とかめちゃくちゃ馴染んでるからね。いつしか出来上がっていたそんな信頼感がとても温かかった。一茶が共同学祭で女装してミスコンに乗り込む理由にも彼なりの熱い想いが隠れていて、それが芽衣の背中を押すことにも繋がっていて元気がもらえる作品でした。この男だらけの表紙でスルーしちゃった人は絶対損してるからぜひ手にとってほしい。
青春離婚 (星海社FICTIONS) 紅玉 いづき HERO 講談社 2014-06-13 by G-Tools |
SNS、ブログ、ソーシャルアプリ等々、現代の若者はスマホやタブレットを通じて指先から恋をする。そんなもしかしたら実際にあってもおかしくないかもしれない恋を描いた短編を3本収録する1冊。個人的には2作目の「非公式恋愛」がお気に入りです。ヒロインが超かわいいんだよね。それにしてもこのネット上におけるコミュニケーションの微妙な距離感の描き方がすっごい絶妙なんですよ。このじれったい恋心の機微が愛おしく感じるくらい心理描写も卓越してるし、どのキャラクターにも愛着が湧いてしまう。ラブレターは手書きが王道かもしれないけれど、掌から発信されるデジタル文字にだってきちんと温度はあるんだよ? みたいな。
陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女 (ファミ通文庫) 野村美月 竹岡美穂 KADOKAWA/エンターブレイン 2014-06-30 by G-Tools |
泣けない少女と笑えない少年のひと夏の淡い恋物語。作中二人の会話らしい会話はほとんどなく、ラノベにしては大変ストイックなボーイミーツガールでありますが、小さな出会いをきっかけにお互いの存在が大きくなっていく過程がいい。そこら辺はさすがの野村先生だった。千星も陸も客観的に見て幸せとはいえないし、それぞれ将来にも悲観的。しかし「今なにをしているかな?」「今なにを思っているかな?」「きっと素敵な毎日を送っているんだろうな」という想いを馳せながら相手の幸せを純粋に願う二人の姿がとても愛おしいし、なにより切ない。隣にいないのに、心は通じてるもどかしさ! たまらん。読者としては二人の再会を願わずにはいられない。
ゼロから始める魔法の書 (2) ―アクディオスの聖女 (上)― (電撃文庫) 虎走 かける しずま よしのり KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-11-08 by G-Tools |
人間に戻りたい半人半獣の獣堕ちである名も無き傭兵と、世界を滅ぼしかねない魔法書を集めている美貌の魔女・ゼロによる、魔法書をめぐった旅物語。王道ファンタジーを地で行ってるけれど、その完成度は折り紙つき。なによりも傭兵とゼロの関係性が大好物。そんな関係性をこれ以上なく表したこの2巻の表紙の素晴らしさときたら! しずまよしのりさんには感謝しかない。利害の一致から始まった関係だけれど、いつの間にか互いの心配をしていたりして、でもそれを素直に口に出さない意地っ張りカップルぶりが微笑ましいんだよね。人気の出るシリーズになるといいなあ。応援したい。
そんなこんなでいかがでしょうか。今年は割と読書量があったので、いろいろ悩みました。本当はまだ「これもいいぞ!」ってタイトルもあるんですが、あんまり長くなっても仕方ないし。来年もおもしろい作品にたくさん出会っていきたいです。「好き」をきちんと言葉にしていくスタンスを保っていきますので、来年もよろしくお願いします。
ちなみに遅すぎる宣伝なんですが、今回挙げた内の8つのタイトルは11月末に出た「このライトノベルがすごい!2015」でもライターとして紹介記事を書かせていただきました。全部で30タイトル分書いてます。どのタイトルを書いたかは読んで確かめていただければと思います。よろしくお願いします!
このライトノベルがすごい! 2015 『このライトノベルがすごい!』編集部 宝島社 2014-11-21 by G-Tools |