久しぶりのラノベ感想(2015年上半期編)
どうもこんにちは! 約半年ぶりの更新です!
気づけば2015年も半分が終わり途方に暮れそうになりますが、そんなこともはや毎年のことなので気にしないキニシナイ。
とまあ上半期が終わってキリがいい(?)ので久しぶりに本の感想でも書くかという気分になりました。上半期読んだ本で特におすすめの10タイトルを引っさげてきましたので「へえ、そんなのもあるのか」という気持ちで軽く読んでくれたら幸いです!
下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。 (ファミ通文庫) 野村 美月 えいひ KADOKAWA/エンターブレイン 2015-06-29 by G-Tools |
とあるツテから下読みバイトを務めている主人公・青がたまたま手に取った投稿作。顔文字はもちろんのこと、フォント変えから過剰なまでの読者サービスと個性の強い作品の作者が、クラスメイトかつ『氷の淑女』と呼ばれている孤高の少女・氷雪だったことを知り、その大きすぎるギャップから興味を引かれていく――という流れから始まるなんともピュアなラブストーリー。
まだ発売したばかりのものを序盤に持ってくることでラノベ読みとしての意識を高く持っていくスタイル! というのは置いておいて、ストーリーラインがまた綺麗にまとまっていてさすがの野村先生というところ。上にも書きましたがヒロインの氷雪がギャップ性のあるヒロインで、こんな澄ました顔の美少女が『しましまパンツ\(@^0^@)/』とかタイプしている姿を想像したらそりゃもうこちらとしても笑顔になるに決まっているでしょう。
また新人賞に作品を投稿している読者の方にとっても「下読みはこういうことを意識してやってるよ!」というのが見えるので、そういうのが気になる人も読んでみるといいかもしれません。少なくとも自分はリアリティがあると思います。青くんのような気持ちで作品に接することのできる人が増えてくれれば、もうちょっとクリエイターに優しい世界になるんじゃないかと思うんですよね、これ。永遠に持つことは不可能な価値観だけど、大切なことだ。
【15上期ラノベ投票/9784047305151】
ミス・ファーブルの蟲ノ荒園(アルマス・ギヴル) (電撃文庫) 物草 純平 藤 ちょこ アスキー・メディアワークス 2013-06-07 by G-Tools |
<蟲(ギヴル)>と呼ばれる謎の巨大生物の死骸が世界的な燃料となっているスチームパンクな舞台で繰り広げられる、偏屈な虫好き魔女・アンリと東洋の若き侍・慧太郎のボーイミーツガール。今年刊行された作品じゃないですけど『今年読んだ本』なので余裕のセーフ!
友人の勧めで読みましたが、見事にハマってしまいました。アンリと慧太郎の姉弟(師弟)みたいな関係性や、己の正義がぶつかり合う白熱のバトルシーンなど魅力の多い作品ですが、きっと勧めてくれた彼は慧太郎が女 装 主 人 公であることを一番の理由に勧めてきたんだと読んでから思いました。物語の成り行き上、逃避行を強いられる慧太郎が女学園で身分を隠して生活するにはこうするしかない。なるほど、最高じゃないですか。ちょうど「最近女装主人公少ねえな」と思ってたところだったので余計にです。ええ。
まあ冗談はこれくらいにして、上述しましたがアンリと慧太郎の関係性が特にいいんですよね。自分の振りかざした『正しさ』の重さを知らない慧太郎が、どれだけの逆境と覚悟を背負って『間違えている』敵と相見え、現実の苛酷さを思い知ったり浅慮な自分を恥じたりするんですが、そんな彼を「アンタは間違ってない!」ときっぱり言ってくれるアンリの姉御肌っぷりときたら。こんなん惚れるに決まってるじゃん……あれ、どっちがヒロインでしたっけ? と、こんな感じでコミカルとシリアスのメリハリもついていて、おまけにかわいいカップルを眺められる美味しい物語、興味出てきませんか? 本当にオススメです。
冴えない彼女の育てかた (7) (富士見ファンタジア文庫) 丸戸 史明 深崎 暮人 KADOKAWA/富士見書房 2014-12-20 by G-Tools |
やっぱ丸戸作品はただのラブコメなんかじゃ終わらねえよなあ!? と思わせられた展開だった。正直ずっとヲタトークと業界ネタでやるのかと思いつつあったので、いい意味で裏切られました。予想不可能だったこともあって余計に衝撃でした……が、おもしろい。しかも熱い。こんな展開なかなか見られません。加藤さんがやっぱり正ヒロインだったんだ。
英梨々と詩羽先輩はもうサークル離別となりますが、これはクリエイターの扉を開けた倫理くんを信じて「上のステージで待ってる(だからきっと迎えに来てね)」というメッセージでもあるんでしょうね。この倫理くんにはきっつい展開を経てサークル再結成の流れに到達したら、目頭が熱くなるどころじゃ済まないですが……。けど丸戸先生のことなので、まだ波乱はあるんでしょうね。出海も後輩キャラな割には英梨々なんかよりよっぽど強かなヒロインなので、再会するころには「先輩たちの席はもうないですよ^^」とか言っちゃいそう。うわあ、修羅場しかない……。
【15上期ラノベ投票/9784040704265】
二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫) 赤城 大空 ぶーた 小学館 2015-01-20 by G-Tools |
想いを伝えてしまったがゆえに、燐が死に際に浮かべた表情と放った言葉の意味に立ちすくむ智。そんな彼に不意に訪れた二度目の夏。燐が笑顔で最期を迎えられるように、今度は自分の想いを伝えず押し殺すことを選択する淡い青春を描いたお話。現在アニメ放送中の『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』と同じ作者とは思えないくらいキレイです。
この物語の肝は必ず訪れる燐の死を回避することではなく、彼女にどんな最期を迎えてもらうかに焦点が当たっているので、そりゃもうつらさも切なさも倍プッシュ。伝えたいけど伝えられないこのもどかしさ。近づきたいのに近づけないというこの距離感。好物な人は多いはず。読んでない人は今すぐ読もう。季節感も今にピッタリ。
ところでこれ読んだ人で自分のように「ひょっとして燐もループしてる……?」って思った人はどれくらいなんだんろう。結構そんなことを思わせる描写もあった気がするんだけど、そう考えるとまた別の切なさが生まれるんだよなあ。
【15上期ラノベ投票/9784094515329】
ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫) 鳩見すた とろっち KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2015-02-10 by G-Tools |
大陸が海に沈み、紺碧の空と海だけとなった『アフター』と呼ばれる世界。島から島へのメッセンジャーを生業にしているアキが、遭難して極限状態のなか出会ったタカと友情を深めながら数多の困難を乗り越え、生きるということの意味を見出す航海ファンタジー。
ガールミーツガールで電撃大賞の大賞枠をもぎ取った力強い作品です。とはいえ読み終えてみるとこれは大賞以外やれないだろうなと思いました。それくらい完成度も高かったし、作者が好きで書いていることが文章から感じられる。個人的にこういうジャンルが大好きというバイアスもかかっていますけどね。ガールミーツガールと聞いてピンときた方は読んで損ないと思いますよ。
【15上期ラノベ投票/9784048692472】
エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ (MF文庫J) 東 龍乃助 みこと あけみ KADOKAWA/メディアファクトリー 2015-01-22 by G-Tools |
『マリス』と呼ばれる人類を食い散らかす謎の異形が蔓延る日本。それに対抗できる唯一の兵器のパイロットであるセレンは精神的に追い詰められ、彼女の絶体絶命のピンチに陥ったところに突如現れたのが、エイルン・バザットと名乗る青年だった。彼を救世主と一時は盛り上がった人類だったが、そのエイルンはこの世界にとって有名なアニメのキャラクターで……。
今年の新作で恐らく今一番ノッている作品だと個人的に思います。MF文庫はとりあえずハーレムの印象が強い人が多いでしょうが、この作品はそんな思い込みを真正面からぶち壊す正真正銘のエンターテイメントの塊でございます。ヒロインを守り、世界を救う――そんな少年漫画に馴染みがある人ほどハマると思います。それくらいの熱量がこの作品にはある。キャラデザイン、メカデザイン、漫画とひとつの作品に3人の絵描きを起用するという公式の推しっぷりが読み終わってわかりました。実直で熱血のエイルンは見ていて気持ちいいし、味方のいない者同士としてセレンと心を通わせていく過程もよかった。そしてなによりカッコよかったのが主人公機のエルフィーナ。まさに淑女と形容されるに相応しいクールっぷりだった。こんなん惚れるしかないやん?
【15上期ラノベ投票/9784040673042】
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (7) (電撃文庫) 宇野朴人 竜徹 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2015-03-10 by G-Tools |
ただただ圧巻されるだけだった。ここまでの衝撃を受けたラストもなかなかないでしょう。読み終わってしばらくは放心していたのをよく覚えています。というかもう構成がズルいよね。1巻から阿吽の呼吸を発揮していたイクタとヤトリの馴れ初めがようやく明かされたと思ったらこれですよ。でもこの幼少期のエピソードや今までの二人のやり取りを見ると、この衝撃の展開は最初から目指していたものだったんだなと思います。
次回から新章突入というもののメイン六人のうち一人は退場、一人は廃人、一人は悪堕ちしてる状態なんですが……ホント予想がつかない。
【15上期ラノベ投票/9784048693363】
コロシアム (電撃文庫) 土橋真二郎 白身魚 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2015-04-10 by G-Tools |
ナイフと拳銃を持たされた30人の女子生徒が、見知らぬ土地で殺し合いを強いられるデスゲーム。その30人はそれぞれクラスの代表で、各々にクラスメイトのサポートがあるのですが、そのサポートはあくまで安全圏からデバイス越しにされるので、危機意識の差がやがて大きな歪みになっていく。当人はただでさえ常に命の危険にさらされているのに、サポートという名目の監視に24時間置かれ、最初はありがたいと思っていた厚意が煩わしくなる心理描写が本当に生々しかった。
まず土橋作品が好きな方に言っておきたいんですが、まだ読んでない人は早く読んだ方がいいです。久々の白身魚さんとのコンビということもあり、作品のゲーム性も原点回帰して醜悪さが際立ってます。個人的には『扉の外』よりもエグいと思ってます。それにしても『薄着になるほど索敵範囲が広がる』なんてゲームの設定、ホント土橋作品だなあと思いました。
【15上期ラノベ投票/9784048650540】
たまらん! メチャクチャな青春ラブコメに巻き込まれたけど、生まれてきてよかった。 (MF文庫J) 比嘉智康 本庄マサト KADOKAWA/メディアファクトリー 2015-05-25 by G-Tools |
『好きな人には別に好きな人がいる』を数珠つなぎにしていくがごとくの多角関係ラブコメ。久しぶりの比嘉智康作品でしたが、本当にもう「たまらん!」って感じだった(タイトル回収)。このキャラクター造形、このセリフ回し、この少し突飛でけれど味があるストーリー、全部比嘉先生にしか生み出せないもので、ラブコメであるにかかわらずすごく濃い印象を植え付けられた。そんな奇才に多角関係ラブコメをやらせるのか。絶対おもしろいんだよなあ。
こちらを立てればあちらが立たず。それが恋である限りは誰かが必ず泣きを見なければならないフクザツな人間模様の中、主人公のたまらんがみんなの恋を応援するというのだからさあ大変。気づいた頃には背水の陣で、どう収拾つけるのか楽しみです。
【15上期ラノベ投票/9784040676609】
はたらく魔王さま! (13) (電撃文庫) 和ヶ原聡司 029 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2015-06-10 by G-Tools |
エンテ・イスラ編が終わってからというものの、おもしろさにますます磨きがかかってると思う。なんといっても勇者だ魔王だセフィロトだエンテ・イスラだの大筋と並行して、『日々の生活のために飯の種を稼がなければならない』という現代社会に生きる人間として当然のことをやっているし、真奥や恵美を始めとしたキャラクターにもその認識が強く根付いている。その上「エンテ・イスラの危機はわかったけど、じゃあ世界救ってる間に自分が抜けたことによる職場の影響は誰が保障してくれるんですか?」ということを投げかけたりもするし、そういう作品はちょっと他では見れないんじゃないかな。普通の異世界転生ものだったら仕事なんか喜んで投げ出すし、ンなこと気にしちゃいられないし。
今でこそエンテ・イスラのひとびとと深く関わりを持っている千穂も、この現代日本での身分はあくまで一介の女子高生ですし受験生です。非日常に慣れ切ってしまってからの「いつまでも今のままではいられない」という彼女の歳相応の焦りがすごく鮮明に描かれていてよかった。悪魔や天使と触れ合ってきて強メンタルに見られがちの千穂だけど、こうして見るとホントに普通の女の子なんだよな。
気づけばもう14冊も出ているシリーズであるけれど、個人的にまったく間延びしてる感覚がないんですよね。すごいことですよねこれ。
【15上期ラノベ投票/9784048652056】
※追記(7/15)
ちょうどタイミングが良かったので、いちせさん主催の『好きなライトノベルを投票しよう!! - 2015年上期』に久しぶりに投票しました!