絵空事の切れ端

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自分を動かす、秘めた決意と小さな勇気(給食争奪戦感想)

 ラノベの感想を単品で上げるのまた半年ぶりくらいになってしまったけど、他の作品ではあまり見かけない魅力が詰まった作品だったのでちょろっと書こうかなと思いました。
 シンプルかつ心躍るタイトルに惹かれて手に取ったけど、まだ自分の中で良作を引き当てる勘みたいなのが残っているようで良かった。


4048666436給食争奪戦 (電撃文庫)
アズミ すきま
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-06-10

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 この物語は小学生視点で送られる短編集なんだけれど、その「小学生らしさ」が物語全体に良い方向に馴染んでいて、なんだかとても親しみやすいなと思った。キャラも多かったけど、どのキャラも立ち位置がわかりやすいし、「このふたりは後にくっつくんだろうな〜〜〜」とほのかに匂わせるような恋愛模様もほんわかしてて、そういうところもまた小学生らしい。
 給食の余ったデザートを早食いやじゃんけんで争ったり、ペンのおしりで消しゴム弾いたり、自由帳で自分の考えたゲームを友達にやらせたりと、思わず童心に帰るような「小学生あるある」がたくさん詰まっている。それと構造的な面でクラスメイトの名前がカナ表記で統一されていたり、お互いを下の名前で呼ぶのが基本だったり、雰囲気作りに徹底してるなあと思わされた。誰に対しても下の名前呼び捨てだったり、あだ名が基本だったのも小学生までしかできないよなー。少なくともおれはそうだった。さらに細かいところだと、テツがサワコに対して「女子のくせにジャンプ読んでる」って思ったところがまさに小学生っぽい描写でちょっとクスッときた。


 そしていじめ、万引き、家庭内暴力と小学生たちが直面する陰惨な面も少なからず出てくる。小学生にだって彼らなりの従うべき階層社会があり、守らなければならないルールがあり、そうした息苦しい空気の読み合いの中で自分なりの答えを出して乗り越えなければならないこともある。
 短編2本目の終着点が「自分の非を認める」ことなんだけど、このクラスメイトが続々と罪の告白をしていくシーンがとても良かった。自分のしたことが悪いことだと認めて、謝るというのは小学生にはなかなかできないことだと思うんだよね。最悪ハブられることを考えれば、とても勇気のいることだし。けど勇気を振り絞って、自分の感情に素直に訴える子供らしい一面は、彼らの小さな成長が垣間見えたようで、温かな気持ちになった。


 読み終わってみると不思議な読了感が残る、そんな作品でした。