絵空事の切れ端

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凄まじき愛の破城槌(劇場版アイカツスターズ!感想)

 

  ズルい、と思った。

 

 公開一週間前。披露試写会でこの『劇場版アイカツスターズ!』の一回目を観たとき、全身に走った衝撃は途轍もないものだった。こんなのまともな人類が浴びたら勝てるわけがない。小一時間くらいの劇場アニメひとつでこんな頭がいっぱいになるとは誰が思っただろうか。それくらい凄まじいほどの濃密な友情――いや、まさしく愛だった。友情を描いたドラマではあったけれど、確実に友情を遥かに超越してるものだった。

 

 公開から一週間経った現時点で、この『劇場版アイカツスターズ!』を累算6回も見てしまったが、もしかしてなんらかの病気なんじゃないかと自分でも思った。それでも体が求めるものには抗えない。もはや水や空気と同等の存在だった。

 それくらい病的なまでに虜になってしまった、『劇場版アイカツスターズ!』の感想です。公式からの特大燃料もとい看板カップルとなった「ゆめロラ」を中心に、これまでのTVアニメで少し不遇だと感じていた小春と、それを救ったあこによる「こはあこ」を書いていきたいと思います。当然ながらネタバレ全開ですが、よろしければお付き合いください。

 

 

 聞かされていたあらすじからゆめとローラが喧嘩するのはわかっていたんですけど、仲直りまでのプロセスも含めて、ドラマの構造の予想はある程度ついていました。『アイカツスターズ!』ではゆめロラが一番熱いカップリングなのは違いないですが、あんまり期待値を上げすぎてもしょうがないなと割り切っていました。『劇場版アイカツ!』の時とは違い、まだTVアニメが始まって4ヶ月しか経っていないのでキャラの掘り下げも完全とは言い難いですし、『アイカツ!』お得意の次世代へ繋ぐドラマも望めません。以上の理由から「南の島でいつもとはちょっと違ったキャラの面を見せる」という番外編みたいな扱いのアニメになると思っていました。

 

 結果としては、そんな気構えで固まった城は城壁ごと破壊されました。

 

 どこか女児アニメだと思って舐めていました。「深夜アニメじゃあるまいしここまではやらないだろう」と勝手に線引きしていました。申し訳ありません。まさかマウントポジションを取られて「ゆめロラ」に一点特化した拳で殴られ続ける内容だとは思っていませんでした。正確に言うとドラマの構造自体は予想通りでしたが、演出や見せ方次第でこんなにも期待を上回るものになるとは思いませんでした。

 タイトルに「破城槌」という強そうな単語をあえて選んだのもこれです。どんなに身構えていてもほぼ確実にその先入観は崩されるでしょう。すでに観られている方はこの感覚わかってもらえると思います。こう、鳩尾あたりを特大の愛で殴られたみたいなね……。それくらいの衝撃でした。まだこれから初見で観られる人が羨ましいです。

 

 

『劇場版アイカツスターズ!』最初の山場、ゆめとローラの喧嘩シーン。このシーンでローラのことが今まで以上に好きになりました。ひめ先輩に憧れて四ツ星学園に入学したゆめの夢を知っているローラが、彼女の夢のためを思ってあえて諸星学園長の思惑に乗りユニットを組む約束を拒んだ場面は心が痛くなりました。と同時にローラの優しさも感じれる場面でもありました。ゆめのことを大切な友達だと思っているからこそ、できることでしょう。しかし納得できないゆめと掴み合いになり、彼女からプレゼントされたネックレスをダメにされてしまいます。これが後悔に尾を引くアイテムとなるのが巧いと思いました。それから喧嘩になる直前までは同じイヤホンを共有するというとても百合度の高いシーンだったので、その上げて下げるギャップも印象的だった。

 

 そして仲直りのターン。ある意味問題のシーンです。

 真昼に本心を看破された上で焚き付けられたローラ。島での出会いで仲良くなったマオリから伝説のユニットドレスを託され、どうしてもローラと一緒にステージに立ちたいゆめ。夕日をバックにした岬でお互いに本音をぶつけ合う劇的なシーンでした。いや、台詞といい演出といいあまりにも劇的過ぎました。画面内で一瞬何が起こっているかわからなるくらいにはドストレートにぶっ込んできました。

 

 心の距離が縮まったと思った同時、物理的な距離が0になっていた。

 

 近い。あまりにも近すぎる。

 手は恋人つなぎ、額をぴったりくっつけて仲直りの睦言を交わすふたりの姿は――まさしく最強でした。外野を挟む余地が一切ない神聖な空間ができていました。

 

「好きなんだもん……大好きなんだもん!」

「また、わたしとユニット組んでくれる?」

 

 というやり取りからのこれなんですよ。さすがに強すぎます。こんなの誰が勝てるんですか。どなたかゆめロラの倒し方知ってますか?

 いやもうほんっっと~~~~~~に、このシーンだけはまじめにリアルにガチでクソやばかったです(語彙がない)。なんなのもう。ゆめとローラまだ中学1年生なんだよ? でもこれもう恋人でしょ? 完全にデキてるでしょ? てかキスしてるでしょ? これ実質キスでしょ? はいキスしました!! 女子中学生同士がキスしました!!!

 と、初見時の狼狽えっぷりが少しでも伝われば幸いです。もはやお幸せにとしか言えない絆の深まり具合には脱帽してしまいました。これを愛と言わずして何と言えばいいんですか。

 ちなみにM4のスバルとゆめのノマカプもゆめロラと同じくらい好きだったんですが、もう形成的に逆転不可能のレベルまで来てしまいました。ゆめロラが強すぎたんだ……がんばれスバルきゅん。

 

 それからステージのシーン。

 S4のスペシャルライブから始まるんですが、これが過去最大級のステージだった。これだけのためにもこの映画を見る価値があると言っても過言ではないくらい、4人の登場からステージに集まるまでの演出がまさにライブに参加しているようで没入感が凄まじかった。ステージをいっぱい使ったカメラワークといい、S4揃い踏みの『episode Solo』はとてもカッコよかったです。

アニメ『劇場版 アイカツスターズ!』ボーカルシングル

アニメ『劇場版 アイカツスターズ!』ボーカルシングル

 

  もちろん忘れてはいけない今回のメイン劇中歌『POPCORN DREAMING♪』。もうジャケットの時点でズルいし内容知ってると泣けてくる。隙を生じぬ二段構えとはこの事でしょう。壊れたネックレスをふたつのブレスレットとしてペアアクセサリーにしたのもニクい演出だった。EDの場面カットでゆめとローラが同じベッドでそのアクセサリーを作っているカットがありましたが、あんなの見せられたらいくらでも邪推してしまいますよ? レズセックスの暗喩だと思っちゃいますよ? いいんですか?

 虹野ゆめと桜庭ローラ。共にアイカツ!する仲間であり、歌組でS4を目指すライバルでもあり、そしてかけがえのない親友。この『劇場版アイカツスターズ!』のキャッチコピーでもある「ふたりなら最強☆」をこれ以上ないくらい表現した友情ソングでした。ふたりのモデリングも初期と比べると段違いでかわいくなり、ステージの演出もフレッシュな魅力を引き出すものになっていてところどころ目を引かれました。あの仲直りの後だとステージの上でゆめとローラが笑い合うだけで、もう心が満たされてしまいます。本当によかった。仲直りできてよかったね……。なんだか愛しさですら芽生えてきます。

 

 こうして感想を書いてみると『劇場版アイカツスターズ!』がいかに少ない手札で最善を尽くしたかがわかりました。思えばTVアニメの方もゆめとローラが切磋琢磨していくことを優先していたので、この劇場版もストーリーの柱にゆめロラの友情を据えたのは当然だったのかと思います。まさかこんな友情の皮を被った愛の物語になるとは思ってもみませんでしたが。

 このゆめロラの一番の被害者――もとい立役者である真昼も、損な役回りを飲み込みつつふたりのために動くところがよかった。最初は一匹狼で冷淡な印象が強かった彼女も、仲間と何かをすることに喜びを表すようになって成長を感じました。アフターケアというわけではありませんが、姉の夜空から最高のエールをもらう場面は彼女がもっとも報われた瞬間なのではないかと思いました。

 

 

  ゆめの幼なじみとして共に四ツ星学園に入学しTVアニメ第1話から出ているにもかかわらず、いまだにアニメでのステージはなし、ゆめの親友ポジションはいつの間にかローラで埋まり、やはり貧乏くじを引かされているような扱いを受けていると思ってしまう小春。人気投票で決まる1年生4人によるオープニングステージ『アイカツ☆ステップ!』からも外され、裏方に回った小春はといえばステージの直後4人に水を持っていってあげる献身的な姿勢。いい子なんだけど絶対に寂しい思いや悔しい思いもしているんだろうなと思うと、正直ここまではちょっとモヤっとした気分でした。そしてそんなモヤモヤを消し去ってくれたのが、早乙女あこです。

 TVアニメでもなんとなくあこの登場当初から絡みが多いふたりだと感じていました。そして迎えたこの劇場版というわけなんですが、ふたりの思わぬ仲のよさに驚かされました。ステージ自体は描かれませんでしたが、伝説のユニットドレスオーディションでも自然とユニットを組んでいたし、伝説のユニットドレスを求めてふたりで島中を冒険するアグレッシブっぷり。「いつの間にそんなアツアツになったの?」と若干思ったもののそんなことは瑣末な問題で、ボケとボケによるツッコミ不在のカップリングには大層和まされました。あこが引っ張る時がほとんどだけど、小春が手綱を握る時もあり、そんな互いのことをよく理解しているふたりが好きです。こはあこパートの謎の安心感は、ゆめロラでシリアスをやる中での清涼剤のような存在でした。こはあこ、本当にかわいいよね。

 

 まだ始まったばかりなのでいまだに謎も多く、具体的な人間模様もこれからという『アイカツスターズ!』。『アイカツ!』が最終回を迎えた当初は星宮いちごや大空あかりのいない世界に付いていけるか不安でしたが、この劇場版を観て改めて「付いていっても大丈夫だ」と安堵しました。特にキャラクターへの愛は『アイカツ!』そのままなのが大きかったです。まだまだ勢いが止まない『アイカツスターズ!』の今後の展開が楽しみです。

 これだけネタバレをかましておいてアレなのですが、『劇場版アイカツスターズ!』が初めての『アイカツスターズ!』だという方の感想を読んでみたいですよね。人間関係もわかりやすいですし、初見でも楽しめる内容だと思うので嘘だと思わず是非観てもらいたいです。そしてあの例のシーンについてどう思ったか教えてほしいです。

 

 

 同時上映『ねらわれた魔法のアイカツ!カード』について。

 忘れてはいけない存在ですが、何分『劇場版アイカツスターズ!』の衝撃が大きすぎてどうしてもそっちメインの感想になってしまいました。なので簡単に自分がお気に入りのシーンを列挙していきたいと思います。

 

 ・紅林珠璃の安心感

 ・一瞬でスピノサウルスを言い当てる氷上スミレ

 ・投球フォームが長すぎる黒沢凛

 ・「あかり先生、これは!?」とムチャぶりする白樺リサ

 ・らぶゆ~♡掛け軸

 ・フォーマルスーツが似合いすぎる藤原みやび

 ・きいちゃんはかわいい

 ・侍女三ノ輪ヒカリ

 ・ニュータイプ大空あかり

 ・崖登り(ノルマ達成)

 

 いやもう全編通して見どころばかりなのでこれでも一部です。内容は実に『アイカツ!』らしいハチャメチャっぷりで、これがまかり通る『アイカツ!』はやはりスタッフに愛された作品なんだなと思いました。総勢25名による『アイドル活動!』のステージも何度も繰り返して見たいくらい圧巻のシーンですし、好きなカップリングを探してみてはいかがでしょう。キャラの仕草も細かくて、ホント隙がなかった。これまでのことを思うと、画面がだんだん見えなくなるよね……。

 

 というわけで、大変長くなってしまいましたが『劇場版アイカツスターズ!』の感想でした。大好きな作品のひとつとなった本作、ゆめロラのことも含めてこれからも応援していきたいと思います。