絵空事の切れ端

                        好きなものは好きって言おう

2017年ラノベまとめ

 え、もう今年終わりですか!?

 あと30時間ほどで2017年が終わりますが、いかがお過ごしでしょうか。絵空です。

 時の流れが尋常でないくらい早く感じるのでたぶんもうすぐ老衰すると思います。というのは置いておいて、毎度のことながらまとめ的な記事を書いていると年の終わりを感じてしまいますね。もうね、クリスマスもそうだけど、実感がないよ実感が。

 

 そんなこんなで、今年も10選やっていきます。いつものとおり『これ読めば間違いはないから!』というスタイルです。年末年始の時間を持て余したときのお供にどうでしょうか。よければ見ていってください。

 

 

※()の数字は年末ピックアップの回数。Newは初登場です。 

 

86-エイティシックス-(New)

『有人の無人機』として戦うことしか選べない『エイティシックス』と蔑まれた少年少女たちと、安全地帯から彼らに指示を送ることしかできないことに憤る司令官の少女の、決して交わることない儚くも残酷な戦いの記録。

 読むだけで血と鉄錆と硝煙のにおいがただようような、臨場感とスピード感を伴う文章から紡がれるエンターテイメントの雨あられ。まさしく電撃大賞大賞受賞作の名に恥じない完成度だった。人の弱さと醜さを真正面から描いており、だからこそラストの救いが一層映えていたのだと思います。

 続刊では戦禍の外へ保護されたものの、結局は戦うことでしか自分の存在意義を見いだせなかった『エイティシックス』たちを描いており、こちらも非常におもしろかったです。

 

◯平浦ファミリズム(New)

平浦ファミリズム (ガガガ文庫)

平浦ファミリズム (ガガガ文庫)

 

  家族以外は信頼できない排他的な主人公・一慶が、それでも生きていく上での他人と関わることを避けられないことを知り、やがて友人という存在ができ、頼ることを覚える青春物語。

 トランスジェンダーで喧嘩っ早いキャバ嬢の姉、引きこもりでアニメオタクの妹、人付き合いが苦手な中年フリーターの父。社会的マイノリティで構成された家族は、それぞれにそうなってしまった、或いはそうでありたい背景があり、それでもお互いの生き方を否定せずあるがままを受け入れている。社会という見えない敵に傷つけられた家族の姿を何度も見てきた一慶が排他的になるのも無理はなく、亡き母の技術を継いで誰にも頼らず家族を養おうとする姿は尊敬の念すらわいてくる。

 その背景があったからこそ、この物語で一慶が変わっていくことがより映えていたのだと思う。誰も傷つけない美しい家族愛があり、けれどその裏で変わらなくちゃいけない想いは誰もが抱えていて、なんとも歯がゆかった。

 テーマはなかなか重いですが、それだけに印象深い作品でした。

 

俺を好きなのはお前だけかよ(New)

 タイトル回収時に「それお前のセリフだったんかい!」って思ったのもそうだったし、まさかイベントフラグ製造機の『例のベンチ』のヒロイン化も予想できなさすぎて笑いました。いやーもうこの作品は何度笑わせてくれるんだ。もっとやれ。

 この作品は主人公のジョーロにこれでもかというくらい無理難題を吹っかけて、ヒロインの信頼を得たり失ったりしながら逆転ホームランを打っていくという方向性なのですが、一度アガったジョーロをまたすぐ突き落とすのも定番化してきてるのもおもしろさの一端を担っているのだと思います。

 ていうかジョーロの好きな人もうほぼ決まっているのに、バンバンサブヒロインが出てきてハーレムラノベの様相を呈してきてませんかねえ!? ちなみに自分はワタゲストです。

 

弱キャラ友崎くん(2)

弱キャラ友崎くん Lv.5 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.5 (ガガガ文庫)

 今いちばん勢いのあるラブコメ。おもしろさは衰えず今年もピックアップ。 

 オタク主人公が『リア充』を目指す物語は多々あると思うのですが、『リア充』として描かれる『クラスカースト上位層』をウェイとして一緒くたにするのではなく、ひとりひとりにも当たり前のように物語があることを教えてくれるこの作品はなかなか貴重な存在なのではないかと思うんですよね。特に中村グループのひとりである水沢の存在がでかい。捉えどころのないところもあるけど、友崎とも男友達としていい距離感で接してくれるし、きちんと好きな人もいるし、本当に「お前サブヒロインかよ」って思うくらい人間像が描写されている。

 あとはもう何度も言うけど教室の空気の描き方が秀逸。ちょっとしたことでの空気の変わり方ひとつに、自分もここにいるような焦燥感が伝わってくる。そしてクラスの空気を味方につけて他人を攻撃する紺野(ギャル)のやり口が怖すぎる。でも、こういうやつっていたよね……。

 

◯読者と主人公と二人のこれから(New)

 入学式で出会った彼女は、まさしく物語のヒロインそのものだった。

 ある小説のヒロインのモデルとなっている時子と、その小説の愛読者であった主人公とのあるようでなかったボーイミーツガール。いじらしくも時折積極的な面も見せる時子がすごくかわいいのもありましたし、『物語のヒロインとして完結している時子』と『現実を生き、変わり続ける時子』のどちらに惹かれているのかが曖昧になる主人公の苦悩もこの作品ならではだったと思います。

 

冴えない彼女の育てかた(New)

  倫理くんが選んだヒロインについては「まあそうなりますよね」という感想だったけども、敗戦処理(言い方)も含めてとてもいい終わり方だった。晴れて完結おめでとうございます。でもね、ガールズサイドを読むとやっぱ加藤さん強すぎるって思うわけよ。

 英梨々と詩羽先輩がサークルから抜けてから加速度的におもしろくなり、紅坂朱音という傑物クリエイターが色々煽ってくれるおかげで最後まで緊張感が抜けない物語になっていたのだと思います。巷だと紅坂朱音は嫌われているらしいんだけど、自分はそんなことありませんでした。むしろこの作品に必要不可欠な存在ですよ。

 

◯月とライカと吸血姫(New) 

月とライカと吸血姫2 (ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫2 (ガガガ文庫)

 吸血鬼+SFロマン+純愛の異色の組み合わせによるボーイミーツガール。

 ひとつ声を大きくして言いたいのはこれから読む人は1,2巻セットで読んでほしいということです。1巻で満足しないですぐに2巻を読んでいただきたい。本当に実質上下巻なので……。あのね、1巻と2巻の対比が素晴らしすぎるから。いうて自分も今年の『このラノ』でこの作品を知ったにわかですが、人気の理由が読んですぐわかりました。言葉に尽くせない思いでいっぱいになった。久しぶりにラノベで胸キュンしました。

 ノスフェラトゥ計画の成功で役目を果たし、レフのことを想いながら廃棄処分に怯える日々を送る吸血鬼のイリナを、ああいった形で大々的に救ってみせるレフがとてもカッコよかった。そして『二人で月へ行く』という新たな夢を描いて、また物語もスタートするのでそちらも楽しみです。

 

ゲーマーズ!(2) 

 お互い好きなのにカップルではなくなったというふわっとした状況の中、心春と千秋が攻める攻める。というか完全に下ネタ要員だと思っていた心春がこんな面を見せてくれるとは思いませんでした。本格的に勝者がわからなくなってきましたね。

 こういうカオスな状況に落とすのが葵せきなの十八番なのでもう慣れましたが、よくこんな展開思いつくなあと感心します。というかアグリを早く救ってあげて! 今のところ作中で一番不憫なアグリを救ってあげて!

 

◯先生とそのお布団(New) 

先生とそのお布団 (ガガガ文庫)
 

  売れないラノベ作家・石川布団と、人語を理解する猫・先生による、一人でも多くの人に自分の物語を届けたいと願うリアル作家ライフ。

 著者のラノベ作家としての経歴に沿って虚実交えながら、ときにコミカルに、ときにシリアスに描かれている物語は、読んでいてつらい部分もあった。企画はなかなか通らない、書いてもお蔵入りになることも珍しくなく、いざ発売されれば即打ち切り。若い才能にはどんどん追い抜かれ、差が広がっていく。これが売れない作家の残酷な現実。けれど、売れるものではなく書きたいものを書き続ける心意気は何物にも代えがたいのだと思う。最期に残した先生の言葉も身に染みるようだった。

 というか自分も結構好き好んで石川博品の作品を読む方だと思っていたし、周りも好きな人が多いので自分の中ではメジャーな作家だと思っていたのですが、これを読んだらそうは簡単に言えなくなってしまいましたね。『ヴァンパイア・サマータイム』も『メロディ・リリック・アイドル・マジック』も好きだったのに、そんなに売れなかったのか……。

 

りゅうおうのおしごと!(3)

 もう圧倒的だった。

「今年一番おもしろかったラノベは?」と聞かれたらやっぱりこれを挙げるしかないのだった。逆を言えば今年もこれを越える作品はなかったとも言える。とはいえ、2年連続でこのラノ総合1位を獲得したおもしろさは伊達じゃない。

 運要素のない勝負の世界で、決して届かない世界があるということ。本当の敵は自分自身であるということ。遥か遠くの憧れに追いすがる姿、若き才能に追われる怖さ、そういったプロの世界における『凡人』を『凡人』として描くのがうまかった。それでも必死に食い下がって、なんとか首の皮一枚繋げて、少しずつ少しずつ自らが志したモノへ進んでいく棋士としての在り方がみんな違っていて、ドラマとしても盛り上がる。

 1月からアニメも始まることですし、こういった「この本でしか読めない読書体験がある」というタイトルはとても貴重なので、どんどん広まってくれればいいと思います。

 

 というわけで今年はこんな感じのラインナップになりましたがいかがでしょうか。

 年々ラノベ読みとしての力が衰えており、「もう全部知ってるけど」って言われればぐうの音も出ないくらいメジャー寄りになっている気が自分でもしています。全部ソーシャルゲームが悪いよソーシャルゲームが(責任転嫁)。

 また今年も例のごとく『このライトノベルがすごい!2018』にてライターとして参加しております。『86』を筆頭に30作くらい紹介ページを書いているのでよければご確認ください。

このライトノベルがすごい! 2018

このライトノベルがすごい! 2018