絵空事の切れ端

                        好きなものは好きって言おう

男女と年代と社会の狭間で(娘じゃなくて私が好きなの!?感想)

 

 日々の業務お疲れさまです。絵空です。

 不意に湧いた特別休暇中でまじで暇なので、2日連続でその日読んだラノベの感想を書いてしまいました。

 

 ということで今回は刊行当時話題になった、幼なじみの母親がメインヒロインとなった『娘じゃなくて私が好きなの!?』の感想記事です。昨今は年上ヒロインが波に乗っているものの「母親レベルになっても大丈夫なのか?」と思いましたが、こんなにおもしろいとは思っていませんでした。ラブコメとしても完成度が高かったです。

 

 それでは気になる方は続きからどうぞ。

 

娘じゃなくて私が好きなの!? (電撃文庫)

 

 

「この子は、私が引き取って育てます」
 私、歌枕綾子、3ピー歳。亡くなった姉夫婦の娘を引き取ってから早十年。高校生になった娘は、最近は幼馴染みの男の子、左沢巧くんといい感じ。もしかしたら付き合っちゃうかも? タッくんはとってもいい子だし、私は大賛成ね。
 え? 彼が私に話があるって、まさか『娘さんを僕にください』的な話なの?
 やだもう、ちょっと気が早すぎ―― 
「綾子ママ……俺、ずっとあなたが好きでした。俺と付き合ってください」
「……娘じゃなくて私(ママ)が好きなの!?」
 隣の男の子が惚れていたのは、娘じゃなくて私だった!? 嘘でしょぉお!?
 姉の娘を育ててきた女性と、そんな彼女に片思いをしていた少年。長年の想いが爆発する超純愛ラブコメ、開幕!

 

 

 10年前に亡くなった姉夫婦の娘である美羽を引き取った義母・綾子と、美羽の幼なじみであり家庭教師でもある大学生・巧との年の差ラブコメディ。最近はおっさんとJKがなんやかんやする年の差ラブコメが増えていたが、今作は逆にメインヒロインの年齢が上がっている。しかもおねショタとは違って母親レベルになってくるので「やっぱりキツさ増してくるか?」と最初こそ身構えていたものの、読み終えてみると完成度の高さが窺えた。普通におもしろいし綾子さんがかわいい。

 

 

 そのおもしろさの一端を担っているのが、説得力の持たせ方だと思う。

 このある種ファンタジー的なラブコメは現実的ではないものの、このような経緯があれば好きになる側の理由も納得できるし、逆に好きになられる側が一定のラインを引いてしまう理由も一般的に理解できる範囲である。その上仮に二人が付き合う上で絶対に避けて通れない美羽という存在は二人がくっつくことを望んですらいるし、更に加えれば近所付き合いがある巧の両親ですら、応援も反対もしないが二人の意思なら尊重するという。結果として巧の強い意志のもとに生まれた長い片想いが、全ての外堀を埋めているので不快感がまったくなかった。これを純愛と言わずして何と言おうか。これがもしエロ漫画だったら本命は娘の美羽で綾子さんが外堀側のNTRだったぞ。

 

 

 これはまあ個人的な意見なんですが、ぶっちゃけ巧くらいの年齢の時に読んでいたら素直に楽しめなかったかもしれない。綾子さんくらいの年齢はババアだと思っていただからである。しかし今三十路の自分はどうしても綾子さんの方に感情移入してしまう。守るものに手一杯で、未知への挑戦や何かを失うことを恐れたクソつまんねえ大人の一人だ。だからたとえ両想いであってもラインを引く理由がわかる。だからその優しさを『逃げ』と両断した美羽が自分にも刺さってしまった。

 もし昨今のラノベ読者の高齢化を見据えてこの作品が出てたらなら、うまいな~と思った。

 

 

 イラストレーターはお姉さん系のエロ漫画のイメージが強いぎうにう先生です。

 表紙はかわいく、挿絵はエロ漫画でした。本当にありがとうございました。